黒部川源流域にある溶岩台地・雲ノ平は北アルプス最深部にあり、どの登山口からでもアクセスに最低二日はかかることから「日本最後の秘境」と呼ばれています。登山雑誌で初めてその存在を知ったとき、どうしても自分の目で見てみたい、と思い色々なパターンでの山行計画を練っていました。一番の課題である雲ノ平への行程については、マイカー利用で初日早朝に出発すれば一日でこなせるのではないかと考え、ネット上の山行記録をみてもあまり例のないコースタイム約11時間ほどのやや無理のある計画ですが、自分の脚力を信じてあえてチャレンジしてみました。
 無理矢理取得した4連休、初日の21日木曜日は悪天候のため予定を変更し移動日としました。昼過ぎに名古屋を出発、目的地は遥か富山県の山奥、有峰湖畔を走る林道の最果ての地、折立です。走行距離約270km、5時間ほど走って午後7時頃ようやく到着。ここまででかなり疲労困憊。お盆の最盛期は過ぎたとはいえ、登山者らしき車がそこそこ停まっています。早速プレマシー号の荷台をフルフラットにして、買い込んだお弁当やビール、ウイスキーなどで一人前夜祭。今ひとつ入りにくいAMラジオで女子ソフトボール決勝戦を聞いているうちに、いつの間にか就寝。
 金曜日は早朝3時過ぎに起床し、朝食を無理矢理腹に詰め込んで4時に出発。あたりは当然まだ真っ暗。ヘッドライトの明かりを頼りに、まずは樹林帯の急登をこなします。昨夜飲み過ぎたせいかやや二日酔い気味ながらも、気合い十分で歩いているうちに夜が明け始め、登山道も遊歩道のような歩きやすい道になってきます。空には雲ひとつない良いお天気、左手に姿を見せ始めた薬師岳の雄大な姿に気分も高まり、さらに歩を進めるとようやく太郎平小屋が見えてきました。
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 結局、太郎平までコースタイム5時間の所を何故かたったの3時間で到着。これで、以降の予定に大分余裕が出てきました。少し休憩してから、今度は薬師沢を目指して標高を下げていきます。途中、振り返ると北の俣岳方面に綺麗な青空が。
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 ここで大きなトラブルに見舞われます。歩き始めの濡れた木道で思いっきり滑って転倒、尻餅をついて尾てい骨をしたたかに打ってしまいました…。とりあえず歩くのに支障はないのですが、よく見ると衝撃のせいでストック(杖)が一本折れているではないですか!今や両手にストックを持っていないと満足に歩けない私にとって、これは非常に大きなショック。ケツの痛みに耐えながら冷静に考えると、やはりストックが無いと今後のハードな行程はこなせそうにありません。ここで祈るような気持ちで応急処置をしてみると、20分ほどでなんとかそれなりに使えるようになりました。で、気を取り直して歩いていると何故か再び濡れた木道で転倒、まったく同じ所を強打…。この時はもう正直、痛いとかどうとかではなくて「ウ○○が○れそう…」(ご想像にお任せします)という情けない思いでいっぱい。いや、マジで括約筋?に力が入らないんですよ。その場でしばし気合いを入れて脱○に耐え、再び出発。
 二時間ほどで黒部川と薬師沢が合流する地点に建つ薬師沢小屋に到着。結構凄いロケーション。
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 ここから雲ノ平に向けては、一気に400m以上高度をかせぐ知る人ぞ知る激しい登りです。この時点で9時半頃、なんとか午後になってガスが湧いてくる前に登りきってしまおうと気合いを入れ、12時ごろようやく雲ノ平山上台地の一角「アラスカ庭園」に辿り着きました。さすがに疲れきってザックを下しあらためて周囲を見渡すと、黒部源流の山々を一望できる期待に違わぬ絶景が広がっています。間近には堂々たる山容の薬師岳。
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 進行方向にはこちらも人気の山である水晶岳。
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 そして右手には、明後日登頂予定の黒部五郎岳が。左に伸びる稜線上には、先月登った槍ヶ岳の穂先がチラリと見えています。
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 あとは、なだらかなアップダウンの続く木道を周りの景色を楽しみながら山荘目指して歩くのみ。360度どこを見ても絵になる風景に、ついそのスピードも鈍りがちになります。
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 結局、山荘に着いたのは13時過ぎ。ここまで歩行時間約9時間、お尻はちょっと痛いけど我ながら素晴らしいペース。とりあえずビールを飲んでから受付を済ませ、歩いて20分ほどのテン場に向かいます。平日だからか、あるいは翌日から予想される悪天候のためか、この日のテン場は結局4張のみ。あまり人が多いと五月蝿くて嫌だけど、これはこれでちょっと寂しい…。
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 この後、周囲は一気にガスが湧き視界が無くなり、やることがないためテントで軽く午睡。早めの夕食後19時には就寝するも、寝返りを打つたびに尾てい骨の痛みで目が覚めます。果たして明日無事に歩けるのかどうか、こんな山奥で夜中に独りそんなことを考えていると結構ブルーになってきます…。追い討ちをかけるように、夜半過ぎから雨音がテントを叩き始めました。一応、翌日以降の悪天候は織り込み済みとはいえ、予想以上に早く崩れそうな予感…。以下続く。